アライナー矯正（マウスピース矯正）について

私たちのクリニックでのマウスピース矯正についてご説明します。
 
典型的なマウスピース製作の行程です。（クリアコレクトの場合）

もちろん、この単純な３工程だけでは患者様に提供できるマウスピースは作れません。
メーカーが作成したプランの可否の判断ができることが、実際のマウスピース矯正にとって非常に重要です。
 
実際には、クリアコレクトのソフトを使って、PC上で歯の動きの修正が自由にできるので、ここからが本番です。気がつくと、リアルの歯形模型を確認しながら、３〜４時間PC上で歯の移動を行っているときもあります。
 
・上下顎の位置付けは正しいか
・最終ゴールはイメージ通りか
・そもそもマウスピースで解決できる患者様か
・アンカースクリュー、ゴムかけ、一部を一時的にワイヤーを併用すべきか
・コルチコトミーなど歯槽骨への外科的な手法を併用した方が効果的か
・セラミックを併用する時は、その最終的な形態をイメージできているか
・欠損があるときはデンタルインプラントをいつ行うか
・歯槽骨内での移動になっているか
・歯の移動距離は適正か
・不自然な動きが組み込まれていないか
・エンゲージャーと呼ばれる歯に付与する突起、ボタンの形位置の確認
・マウスピースだけでは動きずらい歯への補助的な装置の付与の想定
 
などチェックしたいポイントはたくさんあります。
 
そして、リアルなの歯の模型を確認しながら、また、PCのソフト上では自分で１歯ずつ修正しながら、何度もマウスピースの会社と連絡をとり、最終的に自分が納得するまで治療計画（治療の設計図）を練り直し、時間をかけて完成させます。ここまで１〜２週間かかります。
 

 
じつは、歯科医師によって、検査の方法、治療のゴール設定、治療方法、つまり治療計画（治療の設計図）が全く異なります。
マウスピース作製会社では、必要とされていなくても、私たちが治療計画を立てる際には必要な検査もあります。

CTによって歯根周囲の歯槽骨の状態・顎関節の状態、手指による誘導によって習慣的な噛み位置と筋肉バランスがとれた噛み位置の差（ICPとCRの差）なども確認しています。
 
さらに、　交叉咬合が存在する時は、矯正期間中にその改善が起きたときに「下顎位の変化」と呼ばれる好ましいけど、大幅な噛み合わせの変化が起きることがあります。
私たちのクリニックでは、予め、顎運動・顎関節の状態を検査し、顎位の変化への対応を行う想定で設定しておきます。
そして、この時点を再スタートとした新しい治療計画を作成し、新しいマウスピースを製作します。
インプラントはマウスピース治療にとって大きな味方（最高のアンカー）になります。
ですので、治療精度を高めるために、矯正治療前や治療中にインプラント治療を同時進行するときがあります。

歯周病の状況、虫歯の状況、また、それらを取り巻く唾液の性状などによる罹患リスクを知ることも治療計画を作る上では大切な要素です。
 
実際のマウスピースは、リアルな口腔内とバーチャルな世界のマウスピースの共同作業と言えるのではないでしょうか。
それを患者様が効果的に使えるように私たちは寄り添い・関わります。
マウスピースをお渡しするだけでは、計画通りに歯は動きません。
 
マウスピースが一つづつステップを進むごとに、細かくチェックすると少しずつリアルとバーチャルの世界での差が生じてきます。その差が大きくなったときは、原因を考えた上で、マウスピースの再製作を行います。

 
長くなりましたが、ここまででも私たちが行なっているマウスピース矯正（アライナー矯正）について全てをご説明することができなかったので、続編を書くことにします。
 
私たちは一人の患者様の治療計画を立て、その経過の確認には、皆様が思うより多くの時間を費やしているかもしれません。
少しでも良くなって頂きたいという想いがマウスピースを通じて、実際の良い治療結果として現れるように頑張ります！