
院長ブログ
「毎日のケア」が未来を変える-「1日2回の歯磨き」が大切な理由-
- 2025年5月26日
- 口腔内ケア
今回は歯磨きの回数についてお話ししたいと思います。
噛み合わせも大切ですが、良い噛み合わせを維持するためにも毎日の歯磨きも大切ですよね。
私たちの口腔内では、歯に付着したプラーク(歯垢)によって、付着後12時間で酸を出す菌(S.mutansなど)が増殖し脱灰が始まります。
脱灰とは虫歯の始まりで、歯の表面を溶かし始めることなのです。
そして、24時間経過するとプラークが成熟し、本来中性だった口腔内のpHが酸性側に傾いてエナメル質が溶けやすい環境になってしまうのです。
*phのご説明はコラムの最後でさせて頂きます。
さらに、48時間を過ぎると歯周病原菌(T.forsythiaなど)が優勢となり、歯肉炎が進行しはじめると言われています。
このため「最低でも朝と就寝前の2回」が標準ケアとされているのです。
そして、1回以下のブラッシング習慣は虫歯発症リスクを約1.5倍に高めると多くの研究をまとめたメタ解析と呼ばれる研究で報告されています。
私は歯磨きしてからのしばらく時間が経過すると、口の中の感じが違ってくるので、1日3回歯磨きをしています。
こちらは、歯を磨いてからの時間の経過とともに、プラークの変化をまとめた表です。
経過時間 | 口腔内の変化 | リスク |
---|---|---|
0–12 h | 初期プラーク(柔らかい) | 低 |
12–24 h | 酸産生菌優勢・脱灰開始 | 虫歯↑ |
24–48 h | プラークが成熟 | 虫歯高 |
48 h〜 | 歯周病菌増殖・炎症 | 歯周病↑ |
24–72 h | 石灰化開始 | 歯石化スタート |
7日〜 | 硬化歯石(自分で除去が不可になります) | 専門的な除去が必須 |
さきほどの説明に付け加えたいことがあります。それは、プラークが時間の経過と共に、歯石に変化する現象が起きるのです。
プラークはわずか24–72時間で石灰化し、歯石に変化し始め、最初は柔らかいのですが、1週間で家庭のブラッシングでは取れない硬い歯石へ成熟するのです。
歯石の表面はさらに様々な細菌を呼び込み、歯肉の炎症を引き起こし、歯を支えている歯周組織(歯肉と歯槽骨)にダメージを与えるだけでなく、全身的な病気の引き金にもなるのです。
ところで、間食を召し上がる方も少なくないと思いますので、そのお話も付け加えておきます。
間食の中に糖分が全く含まれていなければリスクとは関係ないのですが、ちょっとしたお菓子やフルーツと一緒にコーヒーや紅茶などを召し上がることもあると思います。
実は、糖分を摂取する量が多い方や、食事をいれて1日4回以上糖分を摂取する機会がある方は、脱灰時間が有意に延長し虫歯率が上昇することがわかっていますので、虫歯には要注意です。(WHOも総エネルギー比<10%(理想<5%)を推奨しています)
さらに、40代女性が注意すべき追加リスクがあります。
それは、更年期・ストレスが重なりやすくなる年代と言われていて、唾液量が減少する傾向にあります。その影響で、虫歯リスクが上昇するという研究もあります。
では、私たちは何をしたら良いのでしょうか?
ここからは、その対策を5つお話しさせて頂きます。
1:1日に2回は歯磨きをする。
2:歯科クリニックで個別指導を受けて、自分にあった口腔清掃の方法を教えてもらう。
その時は、通常の指導でなく、唾液検査・歯周病菌のPCR検査などをして、自分の口腔内に潜むリスクを把握した上での指導が非常に効果的です。
3:色々な有効成分が含まれた口腔清掃グッヅを使用する。
例えば、1000ppm以上のフッ素配合歯磨剤を使用すると歯の再石灰化を促進する効果があります。
4:歯科クリニックでの3か月ごとのチェックとプロフェッショナルクリーニング(歯石除去と歯肉の中の清掃) を受けに行くこと習慣にする。
その際は、セルフケアに関してもチェックしてもらいモチベーションの維持に務める。
5:4の際には噛み合わせのチェックもしてもらうとさらに良いです。
POINT
歯科ドックご案内ページ
日々のセルフケアとプロフェッショナルケアに活かして、10年、20年先でも歯のことで困らない人生を手に入れましょう!
注:pH(ペーハー)の説明です。
0〜14の数字で、7がど真ん中の “ふつうの水”。
数字が小さい → 酸っぱい(レモンやコーラなど)
数字が大きい → アルカリ性(石けん水など)
となります。
①口の中はふつうpH6.8〜7.2ですが、甘いものを食べるとpH5付近まで下がり、歯の表面(エナメル質)が溶け始めるリスクゾーンに突入します。
ですが、ブラッシングや唾液の力で20〜40分ほどで回復します。
②pHと歯科の関係
むし歯警報:pH5.5以下が長く続くとエナメル質が脱灰。
マウスウォッシュ選び:弱アルカリ性(pH8前後)のものは酸を中和してくれる。
唾液検査:簡易試験紙でpHを測ると、虫歯・歯周病リスクの目安に。
③食事が口腔内のpHに与える3つのステージ
数分〜1時間で 6.8 → 4.0 付近まで急降下し、その後唾液で回復しますが、それまでは虫歯・酸蝕症リスクが高くなる状態です。
④Phが1変わると酸性度が10倍!
例:pH3のコーラは、pH4のトマトジュースより10倍酸っぱい計算です。
味覚表
pH | 例 | 口のイメージ |
---|---|---|
0–1 | 強酸(胃酸・硫酸) | 「金属も溶けるぞ!」級 |
2–3 | レモン汁、コーラ | すっぱすっぱ… |
4–6 | トマト、雨水 | ちょい酸味 |
7 | 蒸留水・体液ほぼ中性 | 「無味無臭」 |
8–10 | 重曹水、石けん | ぬるり&石けん味 |
11–14 | 漂白剤、苛性ソーダ | 「手袋必須!」級 |
参考文献
1.Marsh PD, Devine DA. Dental plaque as a biofilm 2006
2.ScienceDirect Topic “Tooth Plaque”
3.Kumar S et al. Toothbrushing frequency & caries 2016
4.Dublin Corners Dental Blog. Plaque to tartar 24–72 h
5.Cleveland Clinic. Tartar on teeth
6.S. Samadian DDS Blog. 3-month cleaning rationale
7.StatPearls. Diet & Nutrition to Prevent Dental Problems
8.Pedersen AM L et al. Salivary flow & caries 1994
9.Sage Journals. 1000 ppm fluoride recommendation
10.Periodontology 2000. Plaque biofilm matrix & periodontal pathogens 2021
11.Verywell Health. Fluoride in toothpaste
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